[製品レビュー] グラギア キボコ2.0 -チャンスに出会ったとき、このレンズを持ってきてよかったといううれしい経験ができる-

鉄道写真を撮る私は、何年も前からバックパックを使ってきた。ショルダーを使っていた頃もあったが、長時間歩いたり、一方の肩に重量が掛かるのを負担に感じたりということもあってバックパックを使い始めたものの、長い間背負っていると肩や腰に痛みを感じたりすることも少なくなかった。
今回、日本に入ってきて間もないグラギアの「キボコ2.0」を試してみた。「バタフライスタイル」という珍しい構造のバックパックであるが、自分のカメラバッグ選びに応えてくれるものであるか、じっくり使ってみた所感を書いていこうと思う。
超望遠レンズもひとつのバッグに
グラギア「キボコ2.0」シリーズは、バックパックでありながら、超望遠レンズといわれる極端に大きなレンズも収納しやすいカメラバッグだ。超望遠レンズといえば専用のキャリングケースがあるようなものも多く、一般的にはバックパックに入れるという考えすらほとんどない。だから初めて聞いたときは、目からウロコ。正直、半信半疑であった。
しかし製品を見てなるほどと思ったのは、縦に2分割された気室。左右に分かれた長細いフロントパネルがセンターを支点にフラップ展開するという「バタフライスタイル」だった。これは超望遠レンズのような長尺モノの出し入れが考慮された構造で、稀有なタイプである。考えてみれば横割り2分割があるなら縦割り2分割があっても不思議ではなく、ほかのレンズとは使用頻度のちがう超望遠レンズをメイン機材とは別々に収めて扉をつけるというのは、アウトドア撮影においては理にかなっていると思う。




軽量・堅牢な素材とクッションの効果
「キボコ2.0」シリーズは、超望遠レンズを収めるサイズを確保しながら、バッグ自体の軽量化も忘れていない。その証としてグラギアブランドこだわりのX-Pac® VX-21という耐候性の高い軽量素材が採用されている。
今回、私が選択したのはシリーズ最大の「キボコ2.0 30L+」というモデル。シリーズ最大モデルでありながら約1.9kgと非常に軽量につくられているので、詰め込み性の私でも全体重量を心配することなく使用できた。また軽量であることと相反するようだが、腰や背中、肩に触れる部分にはしっかりしたクッションが施されている。取り外し可能なウエストストラップとチェストストラップを活用すれば、体との一体感が高まり、長時間の徒歩移動も苦にならなかった。



標準ズームを挿して収められる奥行きに注目
私がカメラバッグに共通して求める点は、頻繁に使う24-70mm F2.8や16-35mm F2.8などのレンズを縦に収納できる奥行きがあるか否かという点だ。もし寝かせた状態でしか入れられないとなると、スペース効率が一気に悪くなってしまうからだ。もちろんメーカーごとにレンズサイズはちがうので一概には言えないが、「キボコ2.0 30L+」はその点を見事にクリア。ジッパーが閉まりやすいように素材の柔軟性なども効いているものと思う。
おかげで同気室にカメラ2台と70-200mm F2.8やテレコン、クリップオンストロボなども収納でき、一般的なカメラバッグとしての役割はこの時点で十分に果たしている。もう一つの気室に超望遠ズームレンズ200-600mm、2日程度の着替えと洗面用品、バッテリーチャージャー、SSDやカードリーダーなどのバックアップ周辺機器を入れることができた。たとえレンズをカメラにつけたままでも、仕切りを調整すれば十分収められる余裕がある。
片方の気室を着替えなどの日用品だけに割り切れば、「キボコ」ひとつで長期間のロケにも対応でき、超望遠レンズが不要な行程にもアレンジ次第でこの収納力を活かせるだろう。
これだけの機材をひとつのバックパックに収められた試しがなく、もはや感慨深いものがある。



脇を固める複数のポケット
PCは、13インチを簡易なクッションスリーブに入れて背面ポケットに。AC電源用アクセサリーなどの小物類やフィルターケース等は、フロントパネル内のポケットを活用。ここも素材の柔軟性を活かして、ある程度厚みのあるものを入れることが可能だ。バッグ両サイドのメッシュポケットには、ドリンクボトルや小型の三脚などを収められる。

両サイドのメッシュポケットは高伸縮の素材で、ボトルなどをがっしり保持。背負ったままでも容易にアクセスできる。


左右フロントパネルには、メイン気室の手前に小物用の区画がある。PC周辺のもの、身の回りのもの、撮影用品などあらゆるものを仕分けして収めるのに十分なポケットがある。上の方のポケットは、ジッパーを全開にしなくても取り出すことが可能。

メイン気室を分けるディバイダー
記事内で柔軟性という表現をしてきたが、特定の機材専用ではないカメラバッグにおいて、この柔軟性はとても大事だと思う。「キボコ2.0」の柔軟性を高く評価するポイントの一つとして、メイン気室を2つに縦割りにしている仕切り(ディバイダー)に注目したい。バッグの骨格となる部分で取り外すことはあまり想定されていないようだが、縫い付けの固定式ではなく、面ファスナーによる可動式である。たとえば、左右気室の空間をわずかに変えたり、ディバイダーをあえて斜めに設置してレンズ先端と根部のサイズ差を埋めたりという微調整の余地が生まれてくる。
鉄道撮影はなにも駅の近くだけでするものでなく、線路から遠く離れたところや、山に登って撮ったりもする。山登りについては、たとえクルマ移動であっても避けられないもの。これまでなら、撮影行程を考慮して、超望遠レンズは家やクルマで留守番させて挑んだものだ。グラギア「キボコ2.0」シリーズなら、そのような機材の取捨選択に意識を取られることがない上、思わぬチャンスに出会ったとき、このレンズを持ってきてよかったといううれしい経験をすることができるだろう。
鉄道写真家
山下 大祐 やました だいすけ
1987年兵庫県生まれ
日本大学芸術学部写真学科卒業。鉄道撮影プロダクションを経て2023年独立。
幼い頃からの鉄道好きがきっかけで写真と出会い、作品制作の舞台として鉄道と関わるようになる。幾何学的な工業製品あるいは交通秩序としての鉄道を通して、人や自然の存在を表現しようと制作活動を行っている。
カレンダー、CM撮影などに携わるほか、鉄道誌、カメラ誌等で撮影・執筆・講師を行う。
株式会社オフィスヤマシタ代表
日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員
展示
2018年 αプラザ写真展「鉄路の瞬(またたき)」札幌・大阪・名古屋
2018年 個展「SL保存場」富士フォトギャラリー銀座
2019年 αプラザ写真展「鉄道+α」福岡
2019年 αプラザ写真展「鉄道の美しいところ」大阪、福岡、札幌、名古屋
2021年 個展「描く鉄道。」オリンパスギャラリー東京・南森町アートギャラリー
2022年 αプラザ写真展「鉄道ビジュアリズム」大阪、福岡、札幌、名古屋
ウェブサイト:http://www.daisuke-yamashita.com
SNS: https://www.instagram.com/yamadai1987/

GuraGear(グラギア)について

Gura Gear(グラギア)は、フォトグラファーやクリエイターが心地よく機材を持ち運び、クリエイティブな冒険をより豊かにするためのバッグブランドです。
ブランドの原点、はじまりであるカメラバックパック「Kiboko(キボコ)」は、2008年に開発されました。
2019年にアップデートされた「Kiboko 2.0(キボコ 2.0)」が発売され、時代のニーズに合わせてデザインなどを見直し、再設計されました。機材の収納とスムーズな取り出しやすさに重点を置き、機能性にこだわり抜いたカメラバッグです。
キボコ 2.0は、アウトドアシーンからアーバンシーンまで、さまざまな環境での撮影をサポートします。